第二回 おやつの「キレイ」
2021/03/15
今回のテーマは「おやつ」。
このホッとする言葉の響き、いつ聞いても心地良い。
「おやつ」の語源は「昼八つ」。
江戸時代の中期頃まで食事は一日二食が基本で、その間、今の午後2〜4時頃、
当時の時間の呼び方で「八つ(昼八つ)」に食べていたもの、に由来し、
その後、間食全般に使われるようになったとのこと。
江戸中期以降、日本でも砂糖が作られ、蒸し菓子(餅菓子・まんじゅう)、
棹もの(ようかん類)、焼き菓子、干菓子の他、
季節や行事にちなんだものを含め、たくさんの菓子が作られ、おやつになっていたようだ。
中でも小豆の餡の入った饅頭、餅菓子は、当時の庶民にとって上等のおやつだったらしい。
餡の材料である小豆については、本サイト内「キレイ素材―小豆」でも紹介しているが、
小豆は、たぶん多くの人が想像している以上に栄養価が高い。
糖質の他、たんぱく質、鉄等のミネラル類、糖質からエネルギーを作るときに大切なビタミンB1、
不溶性食物繊維、さらに皮の部分を中心に、からだの酸化による老化を防止することで注目される
各種ポリフェノール類を多く含む。
また、小豆を餡にすること(糖と煮ること)で起こる反応により
新たな抗酸化物質(メラノイジン)も生まれる。
江戸時代の庶民がどこまで栄養効果を期待して小豆餡をおやつにしていたかは定かではないが、
甘い餡の菓子を苦み渋みのあるお茶とともにおやつにすれば、カテキン等のお茶の
ポリフェノールも一緒にとる事ができる。
また濃厚な餡を少しずつゆっくり味わえば、次の食事にも響きにくい。
現在の庶民、特に若年層の中には「小豆餡を好まない人も多い」と聞くと、
とてももったいない気がする。
私自身は幼い頃から小豆餡好きだが、その原点に「ぜんざい」がある。
家で小豆を煮る時の湯気の香りと、その時にいつも頭の中で反芻していた、
子どもの頃に遊びで覚えたわらべ唄がセットで、美味しいものとして記憶されている。
今も、良いできあがりを願うおまじないのように、小豆を煮る度にこの唄を反芻している。
「あ〜ずきたった、にえたった〜、にえたかどうだかたべてみよ。
むしゃ、むしゃ、むしゃ、まだにえない〜」 と、ここまで紹介して、
すでに違和感を持った人がいるかもしれない。
今回、このわらべ唄を調べてみると、出だしは「あずき」ではなく
「あぶく」と書いているものが圧倒的に多く、児童書も「あぶく」と紹介している。
私にとっては50年以上の常識を覆される衝撃の発見だった。
そこまで調べても、どうしても合点がいかない。
絶対に「あずき」だったと確信し、同じ場所(東京都下)で育った夫に確認すると
「あずき」と即答だった。
他にも少数派だが「あずき」という地域はあるようだ。
「ぜんざい」の認識も地域によって差があるらしい。
関西では粒あんの汁粉をぜんざいと呼び、関東では粟ぜんざいに代表されるような
「汁なしの汁粉」を指すことが多いそうだが、関東出身の私のぜんざいは関西の認識なので、
一概には言い切れないのかもしれない。
こんな地域差の発見も、長くおやつとして親しまれてきた小豆餡の美味しさのひとつだろう。
ちなみに、粒餡と漉し餡で栄養価を比較してみると、ポリフェノール類、食物繊維は、
皮の入る粒餡の方が多く、豆の中に多く含まれる鉄は漉し餡の方が多く含まれる。
さて、これだけ書くと、私の頭の中はぜんざい一色だ。
「あずき」のわらべ唄とともに家で煮るのもいいけれど、
石山寺で「石餅ぜんざい」をいただくまで、我慢しよう。