第二十一回 水羊羹の「キレイ」
2024/06/13
6 ⽉が⾷育⽉間と⾔うこともあり、私にとってこの時期は、ジュニアアスリートへの講演や取材依頼が増える。今⽇も新聞社から「春から運動部活動を始めた中学⽣の家庭に向けた企画」の取材をいただいた。
熱中症は、中学⽣も⾼校⽣も環境に慣れていない 1年⽣に起こりやすい。特に暑さに慣れていない、不安定な気候が続く6⽉は要注意だ。
熱中症に関して、これら新⼊⽣ジュニアアスリートとともに、毎年問題になるのが⾼齢者だ。令和 3 年消防庁は、熱中症による救急搬送の5割以上は満 65 歳以上で、その割合は年々上昇傾向にあると報告している。
⼀般に、歳を重ねるとともに⽔分を蓄えている筋⾁量が減り、腎臓の働きの低下により尿の量が増える。⼀⽅でからだの感覚が鈍くなることで、喉の渇きに気が付きにくくなる。つまり、⽔分は減りやすく、減っていることには気づきにくくなる。
これらを⾃覚した⽔分補給が⼤切だが、同時に、熱中症対策としても筋⾁量を確保することも意識しよう。
筋⾁は、運動のためにあるもの、と思いがちだが、⽔分保持、エネルギー代謝機能の他、筋⾁は⾎糖値改善、脂肪分解、アンチエイジング発熱量の増加、うつ病抑制、脳機能改善などの⽣理機能に関わる様々な有効成分を分泌している。
筋⾁確保のために必要なのは周知の通り、適度な「運動」、「⾷事」からエネルギーとたんぱく質の摂取、そして⼗分な「睡眠」だが、暑さはこの3つの確保を⼤きく妨げる。 ⾷事で⾔えば、暑さからの⾷欲減退により、エネルギー不⾜が起こり、さらに喉越しの良いものに偏ることでのたんぱく質不⾜になりやすい。
その対策として、夏本番になる前の今の時期から「朝ごはん」と「おやつ」でたんぱく質補給を習慣にすることを勧めたい。
先⾏研究でも「⼀度に摂取するたんぱく質量は、多すぎても少なすぎても筋⾁は効率よく作られない(Daniel R. Moore, 2014)」「効率の良い筋たんぱく質合成には、朝⾷から良質なたんぱく質を摂取することが有効(Yasuda et al. 2019)」などの報告があがっている。
また若者、⾼齢者両⽅を対象とした結果では「運動直後にたんぱく質を摂取することで、 ⾎漿量増加、体温調節能改善による素早い暑熱順化により、熱中症リスクが低下する(Goto M et al. 2010)」ことが報告されている。
夏においしくたんぱく質を補給できるおやつの⼀つが⽔⽺羹。意外に思う⼈も多いかもしれない。種類と⼤きさにもよるが、この叶さんのホームページ内にある栄養成分⼀覧表では、⼩⾖の「⽔⽺羹」1個(90g)のたんぱく質 3.9g、「抹茶⽔⽺羹」1個(86g)のたんぱく質 3.5g となっている。他のお菓⼦と⽐較しても、エネルギー・炭⽔化物は少なく、たんぱく質が多いことがわかる。
今年は改めて、夏をみずみずしく「キレイ」に乗り切るために、⼼地の良いあの「つるん」 とした喉越しを楽しみたい。