第二十回 桜餅の「キレイ」

第二十回 桜餅の「キレイ」

2024/03/21

 桜の開花が近づくとワクワクしてしまう。これは⽇本⼈の特権だと思う。
 ⼦供の頃から桜並⽊が⾝近だったが、滋賀に来てからも⾃宅近くの湖岸に植えられている桜たちが、河津桜→ソメイヨシノ→ヤマザクラ→⼋重桜とリレーしながら咲いていくのを楽しんでいる。

 

 桜の開花が近づくと、スーパーの⾷品売り場の「桜」も花盛りになる。その勢いが年々増しているように感じていたところ、どうもインバウンドが関係していると知った。

 ⽇本を訪れる世界150カ国の外国⼈への調査(株式会社 ICHIGO,2022 年)によると、⽇本の「メジャーブランドのお菓⼦」「ソフトドリンク」の中で⼀番⼈気のフレーバーは「桜味」とのこと。海外展開する商品でも「桜味」は⽇本ならではのフレーバーとして⼈気が⾼ いらしい。

 

 素材のページでも紹介しているが、「桜味」と感じるのは「クマリン」という⾹り成分。 クマリンは、⽣の花や葉にはあまり含まれていないので、桜の花びらを⾷べても「桜味」はしない。桜の葉を⽣乾きや塩漬けにすることで液胞外の酵素と結びついて⽣成されるものだ。

 クマリンには、リラックス効果、⾎流をよくする作⽤があり、さらには抗菌、鎮静、咳⽌め、⼆⽇酔い防⽌作⽤なども期待されている。

 しかしその⼀⽅で、摂り過ぎると肝機能への影響を及ぼす可能性があることから、⽇本ではクマリンの成分そのものを⾹料として使ったり、⾷品に添加することは禁じられている。もちろん、桜餅として楽しむくらいでは安全なので⼼配はいらない。

 ちなみに、春よりも秋の葉のほうがクマリンの含有量は多いので、「桜味」⾃体は春限定とはいえない。ただ、やっぱり桜の時期にこそ味わいたいものだ。

 

 桜餅にはいろいろな種類がある。⼤別すると、⽣地を焼いた餅で餡を包む「⻑明寺」発祥の桜餅のタイプと、道明寺粉で作った餅で餡を包む「道明寺」桜餅。

 私は、東の⻑明寺、⻄の道明寺というイメージがあったが、調べてみるとわかりやすく東⻄の⼆分されているわけではないようだ。

 また、焼く⽣地の材料も⼩⻨粉のみのものから⽩⽟粉などの⽶粉を主とするもの、餡についても、つぶあん、こしあんがあり、さらには餡のない桜餅さえある。細かいことをいえば、 餡の固さもいろいろあるし、桜の葉の⼤きさや枚数も様々だ。

 

 以前、柏餅や柿の葉寿司の葉まで⾷べようとした家⼈に、「さすがに柏の葉は⾷べないでしょ。桜は⾷べるけど」といったことがあったが、桜餅のお店の中には「葉を⾷べることはお勧めしません」とわざわざ注意しているところもあった。

 

 桜餅、奥が深い。今年はどんな桜餅を⾷べられるだろう。ワクワクしながら開花を待とう。

桜もち

あも桜

オカメザクラ

寿長生の郷内、心穏堂横
3/21現在、満開

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